今日の話は特に新しい話ではありません。
これまでも何度も聞いてきたし、たぶんこれからも繰り返し出てくるテーマなんだと思います。
以前からずっと聞いてきた、KPIの話
商談の場で、よくこんな言葉を耳にします。
「売上に直結するKPIが求められる」
「売上に繋がる説明ができる施策じゃないと、社内で説明が難しいんです」
一方で、少し話が進むと、こんな本音も出てきます。
「啓発的な取り組みも、本当はやったほうがいいと思っていて」
「中長期では市場を広げる意味があるのは分かっているんですが…」
どの会社も、かなり真剣に考えています。
短期の成果が必要なことも、現実としてよく分かる。
ただ、話を聞いていると、同じところで詰まっている感覚も残ります。
共通しているのは、「測りやすさ」に引っ張られる構造
話の構造を少し引いて見ると、
ここには共通した前提があるように感じます。
・短期で成果が見えるものは評価されやすい
・評価されやすいものは、意思決定に乗りやすい
・意思決定に乗りやすいものが、施策として選ばれやすい
この流れ自体は、とても合理的です。
誰かが悪いわけでもありません。
ただ、その結果として、
「測りにくいけれど、効いてくるかもしれないこと」
が、どうしても後回しになっていく。
市場を育てるとか、理解を広げるとか、
土壌をつくるような取り組みは、
短期のKPIに落とし込みにくい。
その“落とし込みにくさ”が、
意思決定のテーブルから外れてしまうこともある。
いつの間にか、「その前提」を疑わなくなる
もうひとつ、最近よく感じることがあります。
一度KPIを置いて、 それを前提に施策を回しはじめると、 その前提自体を疑う機会がなくなるということです。
「このKPIで測っていることは、本当に見たいものだろうか」
「そもそも、このやり方で市場は育っているんだろうか」
そうした問いよりも、
「どうやったらこのKPIを達成できるか」
「数字をどう改善するか」
という話に、思考が集約されていく。
営業現場でいえば、
商談“数”→架電“数”→アポ獲得“率”と、
その数や率の最適化が目的になっていく。
(本当に必要なのは顧客との信頼構築、長く続く関係性ではないか?)
もちろん、それ自体は自然な流れです。
決めた以上、そこに向かって最適化していくのは、 組織としても健全な動きです。
ただ、その過程で、 「一度決めた戦略や評価軸そのもの」を 立ち止まって見直す余白が、 少しずつ減っていってしまうようにも感じます。
重要だが短期で測れないことが、置き去りになっていないか
「短期で測れるもの」と「大事なもの」は、 本当にいつも同じだろうか。
測れるものは、安心です。
説明もしやすいし、評価もしやすい。
経営の視点から見ても、判断しやすい。
でも、測れないからといって、 価値がないわけではない。
むしろ、ヘルスケアの領域では、 時間をかけて効いてくるもの、 じわじわ効いてくるもののほうが多い気もしています。
そのことを頭では分かっていながら、 日々の意思決定の中で、 どこまでちゃんと扱えているんだろうか。
そんな引っかかりが、残ります。
現実的な前提としての「短期KPI」
もうひとつ、あらためて思うのは、
この構造が、企業として競争力を高めたり、
経営を効率化しようとする流れの中で生まれていることも、
なんとなく想像がつきます。
経営の立場に立てば、 短期で確認できる指標で判断したい、というのはとても自然な感覚です。
・投資対効果を説明しなければならない
・意思決定のスピードも求められる
・すべての現場の文脈を深く理解するのは難しい
そう考えると、 分かりやすいKPIでジャッジせざるを得ない構造自体は、 すぐに変えられるものではない気もします。
だからこそ、 「KPIで評価されること」と 「本当に育てたいもの」のあいだにあるズレを、 どう扱っていくかが、難しいポイントなんだろうなと感じています。
最後に、ひとつだけ問いを
もし今、
・短期で評価される施策に寄っている気がする
・中長期の取り組みが後回しになっている
・本当はやりたいことが、別にある
そんな感覚があるとしたら、 こんな問いを置いてみてもいいかもしれません。
「いま置いているKPIや評価軸は、 自分たちが育てたい市場の姿と、 どこまで重なっているだろうか?」
その前提がすぐに変わらないとしたら、
その中で、何を守って、何を後回しにしているのか。
そのバランスを、どう考えるか。
今週は、そんなことを あらためて考えさせられました。

田口のひとりごと
ヘルスケアマーケティングの現場から
ウンログ代表田口が、商談の現場で感じたことや、うまくいった/いかなかった話しを、少しだけ言葉にしてみるコラムです。
【田口 敬 プロフィール】
ウンログ株式会社 代表取締役。
マーケティングコンサル、新規事業立上げ、Webエンジニアを経験し、2012年にウンログアプリを個人開発しリリース。2013年にウンログ株式会社を設立。ユーザー起点のたのしくわかりやすいUI/UX開発と確かな腸活情報発信にこだわり120万DLを突破。現在まで300社以上の食品メーカーの腸活マーケティングを支援。


