今日は、今週いくつかの商談を通して、あらためて考えさせられたことを書いてみようと思います。
これも、特別に新しい話ではありません。
ただ、AIの話題が当たり前になってきた今だからこそ、少し輪郭がはっきりしてきたようにも感じています。
最近、気になっているテーマ
以前からよく聞く話ではありました。
「ユーザーから、分析結果をもとに“結局、どうしたらいいんですか?”と聞かれることが多くて」
「だから、アドバイスの精度をもっと上げたいんですよね」
「でも、エビデンスがまだなかったり、言えることも多くなくて…」
データをもとに示唆を返す。
ユーザーの次の一手を導く。
その必要性は、とてもよく分かります。
実際、体験としても重要なポイントだと思います。
ただ、その話を聞きながら、少し立ち止まって考えることもあります。
「アドバイスを強化する」という選択の前提
アドバイスを充実させようとすると、
当然、その“精度”が問われるようになります。
どれだけ個別最適な提案ができるか。
どれだけ状況に合った選択肢を返せるか。
でも、その精度を突き詰めていくと、
ふとしたところで、こんな疑問が浮かびます。
この領域は、
AIに聞いたほうが、
より網羅的で、より早く、
それらしい答えが返ってくる場面も増えている。
アドバイスという機能だけを切り出したとき、
自分たちがやろうとしていることは、
AIと正面から競いにいく構造にも見えなくはありません。
「できること」と「役割として引き受けること」は違う
最近の商談で、もうひとつ印象的だったのが、
医療の現場における役割分担の話です。
診断精度という観点では、
AIの活用によって、これまで以上に精度が高まっている領域もあると聞きます。
一方で、人間の医師に求められているのは、
患者から話を聞いたり、
背景や不安をくみ取ったり、
治療の選択肢を一緒に考えたりする部分。
AIが医師を置き換えるというよりも、
役割が少しずつ分かれていく、という捉え方のほうが近いのかもしれません。
ここで感じるのは、
「できるかどうか」ではなく、
「どの役割を引き受けるのか」という問いに、
重心が移ってきているような感覚です。
全部をやろうとすると、輪郭がぼやける
リコメンドの話に戻ると、
機能を積み重ねていくほど、
サービスとしての輪郭が少しずつぼやけていく感覚もあります。
・分析もできる
・提案もできる
・選択肢も出せる
それ自体は、悪いことではありません。
ただ、「何でもできます」という語り方になったとき、
ユーザーにとって、このサービスは“どういう存在なのか”が
少し分かりにくくなることもある。
特にヘルスケアの文脈では、
「このシーンでは、こういう役割を担う」というストーリーがあるかどうかで、
信頼のされ方も変わってくるように感じます。
最近、個人的に引っかかっていること
AIの話題が当たり前になる中で、
「何ができるか」よりも、
「どこを自分たちの役割として引き受けるのか」
のほうが難しくなっている気がします。
できることが増えるほど、
やらない理由を言語化するのが難しくなる。
でも同時に、
やらないことを決めないまま進むと、
自分たちの価値や立ち位置が、
少しずつ曖昧になっていく感覚もあります。
自分の体験から感じた、役割分担の感覚
実は、自分自身の体験でも、
似たようなことを感じています。
最近、ランニングの記録をフィットネスアプリで管理しています。
走った距離やペース、心拍数などのデータは、そのアプリで見ています。
一方で、
「どんな練習計画を立てればいいのか」
「ちょっとここが痛い。違和感がある。」
「疲労感がある日は、どう調整したほうがいいのか」
といったことは、
アプリの画面をスクリーンショットしてAIに相談することが増えました。
なぜかというと、
AIのほうが、自分のこれまでの運動量や体調、生活リズムといった文脈を含めて、
まとめて受け止めてくれている感覚があるからです。
どの角度から聞いても、
それなりに筋の通った答えが返ってくる安心感もある。
結果として、
「計測や記録はアプリ」
「解釈やアドバイスはAI」
という役割分担が、 自分の中ではかなり自然になっています。
これが正解かどうかは分かりませんが、
少なくとも、自分にとっては“使いやすい形”になっている実感はあります。
最後に、ひとつだけ問いを
もし今、
・アドバイスの精度を高めることに意識が向きすぎている
・機能を足すほど、サービスの輪郭が見えにくくなっている
・自分たちの役割が、どこにあるのか少し迷っている
そんな感覚があるとしたら、
こんな問いを置いてみてもいいかもしれません。
「この領域で、自分たちは “何をやるか”ではなく、 “どの役割を引き受けるか”をどう考えているだろうか?」
答えを急ぐ必要はないと思います。
ただ、その問いを持っているかどうかで、 サービスの設計や語り方は、 少しずつ変わってくる気もしています。
今週は、そんなことをあらためて考えさせられました。

田口のひとりごと
ヘルスケアマーケティングの現場から
ウンログ代表田口が、商談の現場で感じたことや、うまくいった/いかなかった話しを、少しだけ言葉にしてみるコラムです。
【田口 敬 プロフィール】
ウンログ株式会社 代表取締役。
マーケティングコンサル、新規事業立上げ、Webエンジニアを経験し、2012年にウンログアプリを個人開発しリリース。2013年にウンログ株式会社を設立。ユーザー起点のたのしくわかりやすいUI/UX開発と確かな腸活情報発信にこだわり120万DLを突破。現在まで300社以上の食品メーカーの腸活マーケティングを支援。



