正しさでは、人は動かない

今日は、商談の話ではありません。

ある作家さんのインタビュー動画を見ていて、考えさせられてしまいました。
どんなことか?動画の中で印象に残った言葉がありました。

「正しさをそのまま言っても、人は動かない」
「本当に言いたいことは、包んだ方が遠くまで届く」

小説の話として語られていた言葉でしたが、
私にはヘルスケアの課題と重なって聞こえました。


正しいことは、すでに山ほどある

健康食品や健康サービスの世界には、正しい情報がたくさんあります。

・エビデンスがあります
・専門家が監修しています
・成分量は業界最高水準です

どれも嘘ではない。むしろ誠実です。

でも、正しいことをそのまま差し出しても、
人の行動が変わらない場面に、何度も出会ってきました。

「いい商品ですね」で終わる。
「大事なのは分かります」で止まる。

伝わっている(と思っている)のに、なぜ行動変容につながらないんだろう。

正直に言うと、
私は長いあいだ「正しければ伝わる」とどこかで思っていました。

エビデンスがある。
ロジックも通っている。
専門家も監修している。

だから、あとはきちんと説明すればいい。

でもそれは、
“相手がどう受け取るか”よりも、
“自分が正しく説明できているか”に
意識が向いていた状態だったのかもしれません。


伝えたいことを、そのまま言いすぎていた?

作家さんはこうも言っていました。

「自分が話したいことを話しているから、つまらない」
「誰にも知られたくないことを書く」

真正面から言うのではなく、二層構造にする。
入り口は広く、奥に本当に伝えたいものを置く。

この構造を聞いたとき、少し痛い感覚がありました。

私たちは、伝えたいことを、そのまま言いすぎていないだろうか。

「腸内環境を整えることが大切です」
「この成分にはこんな働きがあります」

それは間違っていない。

でも、言いたいことを“言い切る”ほど、
受け取る側の余白はなくなる。

そして、まるで
「やっていないことがダメ」と
迫っているようにも聞こえることがある。

正しさをそのまま差し出すことは、
選択肢を広げることではなく、
無意識のうちに狭めてしまう瞬間もあるのかもしれません。

人は“正しいから”動くのではなく、
“自分で選んだ”と感じられたときに動く。

そんな気がしています。


エビデンスは「入口」になっているだろうか

エビデンスはとても大事です。
それは土台として必要です。

でも、それが“入口”になっているかというと、
少し違う気もしています。

入口は、もっと別の場所にあるのではないか。

・なんとなく最近、疲れが抜けない
・このままで大丈夫かな、という不安
・誰にも言っていない、体への違和感

そういう、まだ言葉になりきっていない感覚のほうが、
人を動かす起点になることが多いのではないか。

正しさは、最後に背中を押す力にはなる。
でも、最初に行動を起こす力にはなりにくい。

だからこそ、 正しさを削るのではなく、
正しさを“包み直す”という発想が必要なのかもしれません。


包むことは、曖昧にすることではない

「包む」と聞くと、
ぼかすことのように感じるかもしれません。

でも、作家さんが言っていたのは、
ごまかすことではありませんでした。

複雑なものを、複雑なまま閉じ込める。
一直線に並べない。
単純化しすぎない。

ヘルスケアも本来、とても複雑なはずです。

体調は一因では決まらないし、
生活習慣も、外部環境も、気持ちも絡み合っている。

それを「この成分で解決」と
一直線に並べた瞬間に、どこかで無理が生まれるもの。

もしかすると私は、
正しさを届けているつもりで、
物語の余白を削っていた側だったのかもしれません。


最後に、ひとつだけ問いを

もし今、

・エビデンスはあるのに広がらない
・正しいことを言っているのに刺さらない
・誠実に説明しているのに動かない

そんな感覚があるとしたら、
こんな問いを置いてみてもいいかもしれません。

「私たちは、伝えたい“正しさ”を
そのまま差し出して満足していなかっただろうか?」

その正しさは、誰かの生活の中に、
そっと入り込める形になっているだろうか。

今週は、そんなことを考えさせられました。


田口のひとりごと
ヘルスケアマーケティングの現場から

ウンログ代表田口が、商談の現場で感じたことや、うまくいった/いかなかった話しを、少しだけ言葉にしてみるコラムです。

【田口 敬 プロフィール】
ウンログ株式会社 代表取締役。
マーケティングコンサル、新規事業立上げ、Webエンジニアを経験し、2012年にウンログアプリを個人開発しリリース。2013年にウンログ株式会社を設立。ユーザー起点のたのしくわかりやすいUI/UX開発と確かな腸活情報発信にこだわり120万DLを突破。現在まで300社以上の食品メーカーの腸活マーケティングを支援。